若者はこうしてパチスロ依存症になった【ある浪人生の物語】

パチスロ

これはある若者がパチスロという蟻地獄に足を踏み入れるまでの物語です。

若者が底辺のおっさんになっていくきっかけを知る物語と言い換えても差し支えありません。

若者がパチスロと出会うまで

若者は浪人生

その若者は非常 に真面目な若者でした。浪人時代は寮に入り、平日は寮と予備校を行き来する毎日、休校日は朝から寮の自習室で夜まで勉強をしていました。朝は7時に起き、夜は深夜に就寝する絵に描いたような努力家です。

1つ彼が至らなかったところと言えば、自分と関わる人は皆良い人だと思っていたことです。浪人してまで寮に入るということは、一生懸命勉強に勤しむ前提で入ってきているに違いない、ということは自分を遊びに誘う人はいるはずもないと考えていました。

Sとの出会い

寮での生活は規則正しく、昼は外で食事を済ませますが、朝と夜は決まった時間に食堂に集まって皆でご飯を食べます。そうしている内に、当然と言えば当然ですが、だんだん話す人も増え、寮とは言え、監視が厳しい訳ではなかったので、部屋に入ってくる人も出てきます。そこで、若者にとって転機となる人物と出会うのでした。(以下S)

Sはたまにしか食堂に現れなかったので、食事を我慢してまで勉強をしている猛者だと思っていました。しかも、目指している大学は私学のトップである早稲田と慶応でした。若者は何の疑いもなくSを自分の部屋に招き入れたのです。Sはなぜか服がいつも臭く、浪人生であるにも関わらず妙に羽振りが良かったのです。

不思議に思った若者は「どうしてそんなにお金を持っているの?」とSに聞きました。するとSは少し躊躇しながら、「パチスロで儲けてるんだよ」と答えました。若者に衝撃が走りました。パチスロで稼いでいることよりも親に寮にまで入れてもらって勉強をしていない人が存在していることに。Sがあまり食堂に現れなかったのは、パチスロが出ていて帰って来れなかった事、服が臭いのはタバコの煙が原因であった事を知りました。

Sとあまり関わっていると自分も勉強に身が入らなくなると思った若者ではありましたが、なかなか無下に扱うこともできずにズルズルと関係を続けていくのでした。

予備校からの帰り道

若者は予備校から寮に帰る道のりで、時折Sと出会い食事に誘われました。若者は親からの少ない仕送りで生活していたので、それを理由に断っていました。ですが、Sは自分が奢るからと言って強引に誘ってきます。観念した若者はたまにではありますが、夕食をSと取るようになりました。

そして、Sに奢ってもらう日が続き、ある日Sがこんなことを言ってきました。「君はギブ&テイクができないね。」と。自分ばかり奢っていたら友達ではないだろうと言ってきたのです。

ですが、若者はお金を持っていません。しかも、親から寮を用意してもらって、そこで夕食が出るのに外で食べる罪悪感と、予めSは金が無い事を承知で誘ってきていた事を考えると、若者は憤りすら覚えるのでした。

ですが、Sばかりがご飯代を出しているのも事実です。若者は悩みます。そんな若者にSはこう言いました。「パチスロで増やせば良いんだよ。」と。若者はまだ受験前の浪人生なので「それだけはしないよ。」と答えました。Sは「世の中、ギブ&テイクが基本だよ。」と捨て台詞を吐き、しばらく若者に絡まなくなりました。

大学合格後の若者

若者はSとの絡みが少なくなったことで、これまで以上に勉強に励みました。そして遂に第1志望の大学に合格することができました。普通なら合格した後はすぐに退寮するのですが、若者は合格したのが他の人よりも早く、まだ残り1ヶ月くらいは大学の試験がありましたので、受験はしませんが、少し残ることにしたのです。

そして、Sに奢られていてばかりいるのは嫌だったので、バイトをしてSが奢ってくれた分くらいは最悪でも返そうと思ったのです。若者は朝から日雇いでバイトをし、Sにご飯をご馳走します。Sも「やっとギブ&テイクができるようになったね。」と、少し感じが悪いですが満足している様子でした。

若者はやっとやり残した事を済ませて寮を出ようとしますが、Sに止められます。「最後に1回だけパチスロに行こう。」と。若者は大学合格を決め、解放的になっていましたので、軽い気持ちで「わかったよ。」と返事をしました。

Sと初めてのパチスロ

Sとパチスロに行く事を決めた若者でしたが、親の仕送りでパチスロに行くのは気が引けたので、バイトをして行くことにしました。Sに最低2万円は必要だと言われたので、1週間待ってもらうように頼みました。若者は日当7千円のバイトをしていたので、かなりの大金が必要だと感じていました。

1週間で4万円程稼いだ若者は2万円を握りしめ、SとSの友達Tと一緒にパチスロを打ちに出掛けました。訳もわからずSに言われるがまま3人並んでパチスロを打ち、その日は1人1万5千円程負けて終わりました。ノリ打ちという打ち方で、初めてなので勝ちも負けも均等にしてくれました。

Sは後で「Tは初めての君に1番良い台を譲ってくれたから、感謝しないといけないよ。」と若者に言いました。ノリ打ちだから、関係ないのではないかと思った若者でしたが、Tに「ありがとう。」と言い、寮へ帰りました。

若者は、バイト2日分以上の金額を半日で溶かし、正気の沙汰ではないと思いましたが、気力が無くなり床へ伏せるのでした。

その後

その後、若者は寮を後にし、大学入学へ備えました。その間、パチスロには触れませんでしたが、負けず嫌いな若者はいつか勝ってやろうと密かに思うのでした。それが地獄の始まりとも知らずに、、、

Sは自堕落な生活がもとで、大学受験に失敗し、2浪目に突入しました。そして2年目も早稲田、慶応には受からず、不本意な大学へ進学するのでした。

最後に

これはある若者が初めてパチスロに触れた出来事です。まだ、ここまでの話だけだと、今後の人生に大した影響を及ぼす気配はありませんが、これがきっかけで若者は転落することとなります。

この話だけを見るとSだけが悪者のように見えるかもしれませんが、それを受け入れている若者にももちろん問題はあるでしょう。その人が良い悪いとは一概に言うことはできません。良かれと思ってやることが、受け取る側の人生に思いもよらぬ影響を与えてしまうこともあります。

ですので、終わってしまったおっさんからの一言を聞いてください。「酒は飲んでも呑まれるな」という言葉がありますが、酒とは比べようもない程パチスロは人を酔わせます。将来ある若者は安易に足を踏み入れると取り返しのつかないことになるかもしれません。もし、自分は全く興味がないのに誘ってくる友達がいるのであれば、強い意思を持って断りましょう。

こんなことを書いておいてですが、おっさんはパチスロが嫌いではありません。あの時パチスロと出会わなければどんな人生を送っていたのだろうという気持ちはあるにせよ、パチスロが好きなのです。そこは誤解無きよう、お願いします。

また、そんなことは自己責任だという人もいるでしょう。ですが、嫌がっている人に無理矢理覚醒剤を打ってみてください。その人は麻薬中毒になるでしょう。依存とはそういうものです。私は麻薬を知らないので比べることは出来ませんが、パチスロの依存も抗い難いものがあるのです。しかも、若者がそうなることは悲しきことでしょう。

パチスロ業界が無くなることは望みませんが、行くかどうか迷っている若者は行かない方が賢明かもしれません。

ちなみにSはパチスロで稼ぐことは愚か、たただの依存症でした。たまたま勝った時は羽振りが良く、負けたら「ギブ&テイク」を連発する人間でした。彼もまた被害者でしょうが、被害者が加害者となってしまうのもパチスロの特徴的なところでしょう。

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